コツコツと、最短合格!!
どうも、こんにちは。ローラボの上野です。
今回は、拙著『司法試験 もう無理と思ったら読む本』でも触れた「実務家から教わる」というテーマについてお話しします。
司法試験の勉強は、弁護士などの実務家から教わった方がよいのでしょうか。予備校講師との違いや、自分の学習段階でも意味があるのかを知りたいです。
この質問に、私はまず「実務家なら誰でもよいわけではありません」と答えます。
実務家講師から学ぶ良さは、条文や論証を問題文の事実と結び付け、答案でどう使うかまで確認できることです。私自身、検察官として実務に携わる中で、法律知識は具体的な事実や証拠と結び付いて初めて使えるものになると感じてきました。
ただ、事件を扱えることと、受験生に教えられることは別です。実務経験が長くても、その経験を司法試験・予備試験の答案作成へ落とし込んで説明できなければ、受験指導として十分とはいえません。
実務家講師に学ぶ意味は、知識を答案で使える形にすること
司法試験・予備試験では、条文や論証を知っているだけでなく、問題文の事実を法的に分析し、その過程を答案で示す力が問われます。
法務省が掲載している司法試験法でも、論文式試験は、専門的な学識とともに、法的な分析、構成及び論述の能力を判定する試験とされています。
たとえば刑法では、規範を覚えていても、凶器、行為態様、負傷部位、回数、当事者の位置関係をどう評価するか分からなければ、答案は抽象論のままです。
民事系でも、誰が誰に何を請求し、相手方が何を争うのか、その主張を支える事実と証拠は何かという順で考えます。条文や論点は、この流れの中に置いて使います。
実務家講師から学ぶなら、知識が現実の場面でどう使われるのかを手掛かりに、試験答案で何を書くべきかまで確認することが大切です。事件の体験談を聞くだけで授業を終わらせないためです。
実務の話を、条文・判例・論証の意味をつかみ、試験答案へ戻るために使います。
司法試験で実務家講師から学ぶ4つのメリット
1.抽象的な法律知識を具体的な場面から理解できる
法律を勉強していると、条文、判例、学説、論証といった抽象的な言葉が次々に出てきます。文章の意味は分かっても、なぜその場面で問題になるのかが見えなければ、覚えた知識を答案で使えません。
民法の要件を例に取ると、言葉だけを暗記するより、依頼者がどのような請求をし、相手方が何を争い、どの事実を証拠で示すのかという順で考えた方が、知識の位置付けが見えてきます。
刑事系なら、捜査、公判、証拠、事実認定がどのようにつながるのかを追います。覚えていた規範が手続のどこで問題になるのか分かると、知識が単語のまま残りません。
2.問題文の事実を評価する視点を学べる
論文答案では、問題文の事実を書き写すだけでは、十分な評価にはつながりません。その事実が規範のどの判断要素と関係し、なぜ一方の結論を支えるのかまで書きます。
実務では、一つの事実を双方の立場から検討します。一方の主張を支えるように見えた事実が、別の事情と組み合わせると反対方向に働くこともあります。この見方は、司法試験・予備試験のあてはめにも使えます。
「Aが強く抗議した」という事実なら、抗議があったと書くだけでは足りません。なぜ抗議したのか、相手方はどう受け止めたのか、前後の言動と矛盾しないかまで見て、その事実の重みを考えます。
実務の結論をそのまま答案へ持ち込むのではなく、事実をどう読み、規範との関係でどう評価するかを学びます。
3.民事・刑事実務基礎を手続の流れから学べる
予備試験の民事実務基礎・刑事実務基礎は、要件事実、事実認定、証拠、保全、執行、捜査、公判手続など、扱う項目が多い科目です。教科書の順に言葉を覚えても、それぞれが何のために必要なのか分からなくなります。
実務家講師には、次のような疑問を手続の流れに沿って聞けます。
- この書面は、誰が何のために提出するのか
- この証拠は、どの事実を立証するために必要なのか
- この主張は、請求原因・抗弁・再抗弁のどこに位置するのか
- この捜査手続には、どのような制約があるのか
- 手続を誤ると、当事者にどのような不利益が生じるのか
位置付けが分かれば、実務基礎と、民法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法の知識を同じ流れの中で整理できます。
4.法律家が結論に至るまでの考え方を聞ける
実務では、最初から論点名が示されているわけではありません。事実関係を整理し、使う条文を探し、複数の見方を比べて結論を出します。司法試験の問題を解くときにも、これと共通する部分があります。
ただし、実務上の処理をそのまま試験答案にはできません。限られた時間と紙幅に収め、採点者に伝わる順序へ組み直します。
実務家講師から学ぶなら、「実務ではどう考えるか」で話を終わらせず、試験答案では何を、どの順番で、どこまで書くのかを聞いてください。ここが曖昧なままだと、面白い実務の話を聞いただけで授業が終わってしまいます。
私は「実務家」という肩書きだけで講師を選ぶことには賛成しません
弁護士、検察官、裁判官として事件を扱う力と、受験生に司法試験を教える力は別です。
受験指導では、実務での処理を知っているだけでなく、受験生がどこで迷ったのかを見つけ、その原因を次の答案で直せる言葉に変えなければなりません。
たとえば、授業が次の言葉だけで終わったら、受験生は次に何を変えればよいのでしょうか。
「実務ではこう処理します。」
「この論点は重要です。」
「もっと事案に即して書きましょう。」
どれも間違いではありません。ただ、受験指導として聞きたいのは、その先です。
- どの事実に注目すべきだったのか
- その事実を規範のどこに対応させるのか
- 反対事情をどう評価するのか
- 試験答案では何を厚く書き、何を簡潔に処理するのか
ここまで具体化できて、実務経験が答案作成に生きてきます。
実務家講師と予備校講師の違い
実務家講師と予備校講師は、どちらが上という関係ではありません。説明の得意分野が異なります。
| 観点 | 実務家講師の強み | 予備校講師の強み |
|---|---|---|
| 知識の説明 | 事件・証拠・手続と結び付けられる | 試験範囲を体系的に整理できる |
| 事実評価 | 複数の見方や実務上の意味を示せる | 採点上のポイントや答案の型を示せる |
| 実務基礎 | 実際の手続を具体的に説明できる | 試験に必要な範囲を絞って説明できる |
| 初学者への講義 | 具体例を使って理解を助けられる | 基礎から順番に学べるカリキュラムを組める |
| 注意点 | 実務の説明が試験範囲を超えることがある | 実務のイメージが伝わりにくいことがある |
現役の弁護士でありながら、予備校講師として受験指導を続けている方もいます。肩書きで二つに分けるより、実務経験と受験指導経験の両方を見る方が現実的です。
基礎知識を順番に学びたい段階なら、カリキュラムが整った講義が合います。知識は学んだものの、事実や手続とのつながりが見えないときは、実務家講師の説明が役立ちます。
実務家講師の説明が役立つのは、知識を使うところで止まったとき
条文や論証は覚えたが、答案で使えない
規範を再現できても、どのような事案で使い、問題文のどの事実を拾うのか分からなければ、答案は先へ進みません。具体的な事件や手続と結び付けることで、知識を使う場面が見えてきます。
事実を拾っても、評価の仕方が分からない
問題文の事実は拾えても、その事実がなぜ結論を支えるのか説明できずに止まる人がいます。実務家講師に聞くなら、一つの事実を双方の立場からどう読むか、証拠との関係をどう考えるかまで確認してください。
実務基礎が単語の暗記になっている
要件事実や手続を覚えたものの、いつ、誰が、何のために使うのか分からない場合です。一連の手続として学び直すと、ばらばらだった知識を同じ流れの中に置けます。
将来の実務と今の勉強がつながらない
試験勉強が暗記の繰り返しに見える時期もあります。現在学んでいる条文や判例が実務でどのように使われるのかを知ると、覚える対象だった知識に役割が見えてきます。
まだ実務家講師を選ぶ段階ではない場合
法律の全体像をほとんど学んでいない段階なら、憲法、民法、刑法などの基本構造を入門講義や基本教材で学ぶ方が先です。
初学者でも、具体例を使った説明が理解の助けになることはあります。ただ、基礎知識がないまま個別の事件や高度な実務の話を聞くと、その話を整理する枠組みがありません。結果として、知識が増えたようで、答案は書けないままということもあります。
相談する前に、自分の状態を確かめてください。
- 各科目の全体像を一度は学んだか
- 条文や基本概念を使って短い問題を検討できるか
- 実務家講師に何を聞きたいのか
- その説明を試験学習へどう使いたいのか
「実務家から学べば自動的に理解できる」と考えず、今の学習段階に合う方法を選びます。
実務家講師を選ぶときに確認したい3つの点
1.司法試験・予備試験の受験指導経験があるか
実務経験が豊富でも、現在の試験で求められる内容や答案の水準を知らなければ、受験指導として十分ではありません。担当科目、指導経験、使用する教材、過去問の扱い方を確認してください。
2.実務と試験答案を分けて説明できるか
実務には、書面の形式、依頼者との関係、証拠収集、時間、費用など、試験とは異なる事情があります。「実務ではこうする」に続けて、「試験答案では何を、どの順番で、どこまで書くのか」を説明できる講師を選びます。
3.抽象的な助言を具体的な改善点へ変えられるか
「もっと事案に即して」「法的三段論法を意識して」と言われても、それだけでは次の答案は変わりません。どの事実を見るのか、どの規範と対応させるのか、次の問題で何を確認するのかまで具体化できるかを見てください。
講師を選ぶときは、肩書きの強さより、実務経験を受験生の理解と試験答案へ翻訳できるかを見てください。
実務家講師から学ぶ前に整理しておきたいこと
相談するときは、次の情報があると話が早くなります。
- 学びたい科目・論点
- 使用している基本書・講義・問題集
- どこまでは理解でき、どこから分からないのか
- 直近で取り組んだ問題や答案
- 実務上の理解と試験答案の書き方のどちらを知りたいのか
「民法が分かりません」だけでは、どこから説明すべきか決められません。たとえば、次のように質問します。
請求原因と抗弁の意味は理解していますが、問題文を読んだときに、どの事実をどちらへ分類するのか分かりません。
刑法なら、このような聞き方ができます。
規範は書けますが、凶器や負傷部位などの事実を、故意の認定でどのように評価すればよいか分かりません。
どこで理解が止まったのか分かれば、実務上の具体例と試験答案の書き方を結び付けて説明できます。
よくある質問
司法試験で実務家講師から学ぶメリットは何ですか?
条文・判例・論証を、具体的な事実や手続と結び付けて学べることです。特に、事実評価、法的三段論法、民事・刑事実務基礎など、知識を答案でどう使うか確認したいときに役立ちます。
実務家講師と予備校講師は何が違いますか?
実務経験の有無だけで優劣は決まりません。予備校講師は試験知識を体系的に教えることを得意とし、実務家講師は知識を事件・証拠・手続の場面に引き寄せて説明します。現在の学習段階と目的に合う講師を選んでください。
弁護士などの実務家であれば、誰から学んでもよいですか?
肩書きだけでは決められません。司法試験・予備試験の受験指導経験があり、実務上の説明と試験答案で求められる書き方を区別した上で、改善点を具体的に示せるかを確認してください。
法律を学び始めたばかりでも実務家講師から学ぶ意味はありますか?
具体例が理解の助けになることはあります。ただ、法律の全体像をまだ学んでいない段階では、入門講義や基本教材で土台を作る方が先です。何を学びたいのか決まってから相談した方が、実務家講師の説明を生かせます。
実務家講師から学ぶ前に何を準備すればよいですか?
学びたい科目・論点、使用している教材、理解できない箇所、直近で取り組んだ問題や答案を整理してください。「どこまでは分かるが、どこからつながらないのか」を示すと、質問が具体的になります。
まとめ:肩書きより、答案へ落とし込める説明を選ぶ
私は、実務家講師の価値は、実務の話をどれだけ多く知っているかでは決まらないと考えています。
実務経験が受験指導に生きるのは、受験生の答案を見て知識がどこで止まっているのかを確かめ、事実や手続の具体例を使いながら、次の答案で何を変えるかまで示せるときです。
ただ、その説明を生かせるかは、自分の答案がどこで止まっているのかを先に言葉にできているかで変わります。原因の切り分け方は論文答案が伸びない原因の見つけ方にまとめました。
実務家講師による答案指導や実務基礎の確認が必要な方は、サービス内容をこちらにまとめています。
それでは、今日も最後に一言!
今日も、コツコツと最短合格!!
では、また別の記事でお会いしましょう!最後までお読みいただきありがとうございました。
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